『ウォンテッド』





概要


  • 原題: Wanted
  • 公開年: 2008年
  • 製作国: アメリカ、ドイツ
  • 監督: ティムール・ベクマンベトフ
  • 脚本: マイケル・ブラント、デレク・ハース、クリス・モーガン(マーク・ミラー、J・G・ジョーンズのコミック『ウォンテッド』に基づく)
  • ジャンル: アクション、スリラー、クライム
  • 上映時間: 110分(劇場公開版)、112分(アンレイテッド版)
  • PG指定: R指定(暴力、性的な内容、言葉遣いのため)


あらすじ


ウェスリー・ギブソン(ジェームズ・マカヴォイ)は、退屈な仕事と病気の彼女にうんざりしている、何の変哲もないさえない青年でした。毎日がルーティンの繰り返しで、自己嫌悪と不安に苛まれる日々を送っています。

そんなある日、スーパーマーケットで謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)と出会います。彼女は、ウェスリーの死んだはずの父親が、秘密組織「フラタニティ(友愛会)」に所属する世界最高の暗殺者だったと告げます。そして、父親を殺した宿敵クロス(トーマス・クレッチマン)が、今度はウェスリーを狙っていると警告します。

フォックスに導かれて「フラタニティ」の隠れ家へと連れて行かれたウェスリーは、組織のリーダーであるスローン(モーガン・フリーマン)と出会います。スローンは、フラタニティが何世紀にもわたり世界のバランスを保つために「運命の織り機」の指示に従って暗殺を行ってきたと語り、ウェスリーに父親の才能を受け継ぎ、次世代の暗殺者となるよう訓練を施します。

当初は戸惑いながらも、ウェスリーは潜在的な能力を開花させ、驚異的な身体能力と銃の腕前を身につけていきます。しかし、訓練を重ねる中で、組織の真の目的や、父親の死の真相について疑問を抱き始めます。彼は、自分自身の運命を切り開くために、誰が真の敵であるのかを見極めなければなりません。


主なキャスト


  • ウェスリー・ギブソン: ジェームズ・マカヴォイ
  • フォックス: アンジェリーナ・ジョリー
  • スローン: モーガン・フリーマン
  • クロス: トーマス・クレッチマン
  • ペクワルスキー: テレンス・スタンプ
  • ガンズミス: コモン
  • コーマ: クリス・プラット


主題歌・劇中歌


映画の音楽は、主にダニー・エルフマンが担当しています。彼のダークでエッジの効いたスコアが、映画のアクションと雰囲気を盛り上げています。特定の主題歌や有名な歌劇中歌があるという情報は見当たりません。


受賞歴


  • MTVムービー・アワード 2009:
    • 最優秀夏映画(受賞)
    • 最優秀女性演技(アンジェリーナ・ジョリー、ノミネート)
    • 最優秀男性演技(ジェームズ・マカヴォイ、ノミネート)
    • 最優秀キスシーン(ジェームズ・マカヴォイ & アンジェリーナ・ジョリー、ノミネート)
  • ティーン・チョイス・アワード 2008:
    • チョイス・ムービー:アクションアドベンチャー(ノミネート)
    • チョイス・ムービー・アクトレス:アクションアドベンチャー(アンジェリーナ・ジョリー、ノミネート)
  • サターン賞 2009:
    • 最優秀アクション・アドベンチャー・スリラー映画(ノミネート)
    • 最優秀監督(ティムール・ベクマンベトフ、ノミネート)
    • 最優秀主演男優(ジェームズ・マカヴォイ、ノミネート)
    • 最優秀助演女優(アンジェリーナ・ジョリー、ノミネート)


撮影秘話


  • コミック原作: 本作は、グラフィックノベル(コミック)『ウォンテッド』を原作としていますが、映画版はコミックのダークで反道徳的なトーンを維持しつつ、物語の多くを独自に改変しています。特に主人公ウェスリーのキャラクター設定や、結末は大きく異なります。
  • 独特のアクション演出: 監督のティムール・ベクマンベトフは、『ナイト・ウォッチ』や『デイ・ウォッチ』といったロシア映画で知られる映像作家で、本作でも弾丸の軌道を曲げたり、スローモーションを多用したりといった、非常にスタイリッシュで斬新なアクション演出を披露しています。
  • アンジェリーナ・ジョリーのアクション: フォックス役のアンジェリーナ・ジョリーは、その身体能力を活かした迫力あるアクションシーンを自ら演じ、話題となりました。
  • ジェームズ・マカヴォイの変身: 本作は、それまで繊細な役柄が多かったジェームズ・マカヴォイが、冴えない青年から冷酷な暗殺者へと変貌する姿を演じ、新たな一面を見せた作品としても注目されました。


感想


『ウォンテッド』は、その斬新なアクション演出とスピーディーな展開で観客を魅了する作品です。日常に倦んでいた主人公が非日常の世界に引き込まれ、覚醒していく過程が痛快に描かれています。特に、ティムール・ベクマンベトフ監督独特の弾丸が曲がる描写や、スローモーションと高速アクションを組み合わせた映像美は圧巻です。アンジェリーナ・ジョリーのクールな魅力も存分に発揮されており、見どころが多い映画です。


レビュー


批評家からの評価は賛否両論ありました。そのスタイリッシュなアクションとユニークな映像表現は高く評価された一方で、過剰な暴力描写や、コミック原作の倫理観の欠如を指摘する声もありました。しかし、エンターテイメント性に関しては概ね高評価で、興行的には成功を収めました。Rotten Tomatoesでは61%の支持率、Metacriticでは64/100のスコアを獲得しています。


考察


この映画は、現代社会における「平凡さ」と「自己肯定感」の欠如をテーマにしているとも言えます。ウェスリーは、自分が特別な存在ではないと感じ、無気力な日々を送っていますが、暗殺者という非日常の世界に足を踏み入れることで、初めて自分の存在意義を見出します。しかし、その覚醒の過程で、彼は善悪の境界線が曖昧な世界に直面し、最終的には「運命」を自ら選び取るという問いに直面します。フラタニティの「殺すべき者を殺す」という偽りの正義は、個人の行動が社会に与える影響や、正義の定義を問いかけます。


ラスト


(ネタバレを含みます)


物語の終盤、ウェスリーはフラタニティの本当の目的、そして父親の死の真相を知ることになります。フラタニティは、かつては運命の織り機に従って秩序を保っていましたが、リーダーのスローンが織り機の指示を自分に都合よく解釈し、私利私欲のために暗殺を繰り返していたことが判明します。ウェスリーの父親もまた、スローンの裏切りを知ったために殺されていたのです。

ウェスリーはスローンに反旗を翻し、フォックスを含む残りのフラタニティのメンバーたちとの間で激しい銃撃戦を繰り広げます。フォックスは、ウェスリーを守り、かつてスローンに忠実だった自分自身の罪を償うため、自分を含む全員を巻き込む形で一斉射撃を行い、壮絶な死を遂げます。

最終的に、ウェスリーはスローンを追い詰めます。スローンはウェスリーに、彼の人生を支配し続けた織り機の指示に従うように強要しますが、ウェスリーは自らの運命を自らの手で切り開くことを選択します。彼はスローンを撃ち殺し、フラタニティの建物は崩壊します。

ラストシーンでは、ウェスリーが一人、銃を構えて画面に向かって語りかけます。彼はもはや平凡な青年ではなく、自信に満ちた暗殺者として、観客(そして世界)に挑むように問いかけます。「次は何をする?」というセリフは、彼の新たな人生の始まりと、彼がもはや誰の指示にも従わない自由な存在となったことを示唆しています。


視聴できるサイト


配信状況は時期によって変動する可能性がありますので、ご利用のサービスで最新情報をご確認ください。


まとめ


『ウォンテッド』は、ティムール・ベクマンベトフ監督による2008年のアクションスリラーで、冴えない青年が暗殺者としての才能を開花させ、運命に抗う姿を描いています。ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマンといった豪華キャストが共演し、弾丸が曲がるなどの独創的なアクション演出で大きな話題を呼びました。コミック原作を大胆に改変し、スタイリッシュな映像と痛快なストーリーで観客を魅了しましたが、暴力描写や倫理観については賛否両論を呼びました。しかし、エンターテイメント作品としては非常に評価が高く、主人公の覚醒と自らの運命の選択を描いた、記憶に残るアクション映画として知られています。