『エグザム』








概要


  • 原題: Exam
  • 公開年: 2009年
  • 製作国: イギリス
  • 監督: スチュアート・ヘイゼルダイン
  • 脚本: スチュアート・ヘイゼルダイン
  • ジャンル: スリラー、ミステリー、心理ドラマ
  • 上映時間: 101分
  • PG指定: R15+(日本ではPG12指定の配信版もあり)


あらすじ


謎めいた大企業「ダスク」の最終採用試験。8人の候補者が、薄暗い部屋に集められます。各自の目の前には、名前が書かれた解答用紙とペン、そして試験官からの指示が記された紙が置かれています。試験官は、試験のルールを簡潔に告げます。

  1. 与えられた質問には、ただ一つの答えしかない。
  2. 質問用紙を汚してはならない。
  3. 部屋を出てはならない。
  4. 警備員に話しかけてはならない。

そして、最も重要なルール。「もしこれらのルールを破れば、即座に失格となる」。

制限時間は80分。試験が始まると、候補者たちは解答用紙をめくりますが、そこには何も書かれていませんでした。質問がないことに戸惑う彼らは、やがて、互いに協力し、あるいは騙し合い、妨害し合いながら、この奇妙な試験の「唯一の質問」と「唯一の答え」を見つけ出そうとします。それぞれの候補者は、異なるバックグラウンドを持ち、異なる戦略で謎に挑みますが、時間が進むにつれて彼らの本性が露わになり、極限状態での心理戦が繰り広げられます。


主なキャスト


登場人物は、それぞれ人種や性別を表すような通称で呼ばれます。

  • ホワイト: ルーク・マブリー
  • ブラック: チャクウディ・イウジ
  • ブルネット: ゲマ・チャン
  • ブラウン: ジョン・ロイド・フィリンガム
  • ブロンド: ポリアンナ・マッキントッシュ
  • ダーク: アダル・ベック
  • サイコパス: クリフ・バリストン
  • ディープ: クリス・ケイリー
  • 試験官: コリン・サーモン


主題歌・楽曲


映画の音楽は、スティーブン・プライスが作曲しました。特定の主題歌や劇中歌は知られておらず、映画の緊迫した雰囲気を高めるためのスコアが中心となっています。


受賞歴


  • インディペンデント・スピリット賞(Independent Spirit Awards)
    • 2010年:監督スチュアート・ヘイゼルダインが「最も期待される作品賞」にノミネート。
  • シッチェス・カタロニア国際映画祭
    • 2009年:監督スチュアート・ヘイゼルダインが「最優秀作品賞」にノミネート。
  • 英国インディペンデント映画賞(British Independent Film Awards)
    • 2009年:助演男優賞(ルーク・マブリー)にノミネート。


撮影秘話


  • 本作は、限られた予算とほとんど一つのセット(部屋の中)だけで撮影された、いわゆる「ワンシチュエーションスリラー」の代表作の一つです。
  • 監督のスチュアート・ヘイゼルダインは、長編映画デビュー作でありながら、巧みな脚本と演出で緊迫した心理戦を描き出しました。
  • 登場人物たちがそれぞれの特徴を表現するニックネームで呼ばれるのは、観客が彼らの背景や素性を容易に判断できないようにするための工夫であり、ミステリー性を高めています。


感想


『エグザム』は、非常にアイデアに富んだスリラー映画です。閉鎖空間での心理戦が巧みに描かれており、登場人物たちの疑心暗鬼や裏切り、駆け引きが見どころです。観客も一緒に「試験」の謎を解こうと引き込まれるような構成になっており、最後まで目が離せません。低予算ながらも、人間の本性を炙り出すような深いテーマ性を感じさせます。


レビュー


批評家からの評価は、概ね好評でした。特に、独創的な設定、巧みな脚本、そして俳優たちの緊迫感あふれる演技が評価されています。限定された空間での物語でありながら、飽きさせない展開が続く点が評価されました。一部には、後半の展開がやや強引だという意見もありましたが、全体としては高評価を得ています。


考察


この映画は、現代社会の就職競争の過酷さ、企業の論理、そして極限状態における人間の道徳心や本性を鋭く問いかけています。候補者たちが、自分の利益のために他人を陥れる姿は、競争社会の暗部を象徴しているとも言えます。また、「唯一の質問」と「唯一の答え」を探す過程は、人生における真の問いと答えを見つけることの難しさや、表面的な情報に惑わされず本質を見抜くことの重要性を示唆しています。


ラスト


ネタバレを含みますのでご注意ください


候補者たちが試行錯誤し、互いを出し抜き、脱落者が次々と出る中で、最終的に残った者は、ようやく「質問」と「答え」の真実にたどり着きます。

実は、試験官が去る際に言い残した、最後の指示の中に隠されていました。試験官が去る直前に言った「他に質問は?」という問いこそが「唯一の質問」であり、その答えは「いいえ」だったのです。

この結末は、最も賢い者や最も暴力的だった者ではなく、最も冷静で状況を分析し、ルールを逆手に取った者が勝者となるという皮肉なひねりを見せます。


視聴できるサイト


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まとめ


映画『エグザム』(原題:Exam)は、謎の大企業の最終採用試験を舞台に、8人の候補者が「質問なき試験」の真相を解き明かしていく、緊迫のワンシチュエーションスリラーです。巧みな脚本と役者たちの演技が織りなす心理戦は、観る者を惹きつけ、人間の本性を深く問いかけます。批評的にも高く評価されており、低予算ながらもアイデアで魅せる傑作として知られています。