『スペル』







概要


  • 原題: Spell
  • 公開年: 2020年
  • 製作国: アメリカ、南アフリカ
  • 監督: マーク・トンデライ
  • 脚本: カート・ウィマー
  • ジャンル: ホラー、スリラー、超自然的ホラー
  • 上映時間: 91分(一部情報では93分)


あらすじ


成功したビジネスマンであるマーキス・T・ウッズ(オマリ・ハードウィック)は、疎遠だった父親の訃報を受け、家族(妻と子供たち)を連れて自家用セスナで故郷アパラチア山脈の奥地へと向かいます。しかし、途中で激しい悪天候に見舞われ、落雷に遭い飛行機は墜落してしまいます。

マーキスが激しい足の痛みと共に目を覚ますと、そこは見たこともない農場の屋根裏部屋でした。彼を看病してくれたのは、エロイーズという老婦人(ロレッタ・デヴァイン)でした。彼女は親切に見えましたが、やがてマーキスは、自分がこの家から出られないように監禁されていることに気づきます。

エロイーズは、フー・ドゥー(ブードゥー教の一種とされるアフリカ系アメリカ人の民間信仰)の呪術を深く信仰しており、奇妙な人形や儀式によってマーキスを支配しようとします。足の怪我で動けないマーキスは、外部との連絡手段もなく、次第にこの不気味な呪術の村に閉じ込められていることに気づきます。

彼は、閉じ込められた家族を救い出し、この恐怖の場所から逃れようと必死の脱出を試みます。しかし、エロイーズとその家族が仕掛ける恐ろしい呪術と罠が彼を待ち受け、肉体的にも精神的にも追い詰められていきます。


主なキャスト


  • オマリ・ハードウィック as マーキス・T・ウッズ
  • ロレッタ・デヴァイン as エロイーズ
  • ジョン・ビーズリー as アール
  • ロレイン・バローズ as ヴィオラ・ウッズ(マーキスの妻)
  • ハナー・ゴネラ as サム・ウッズ(マーキスの娘)
  • カリファ・バートン as タイ・ウッズ(マーキスの息子)
  • ツミショ・マーシャ as 保安官


主題歌・劇中歌


映画の音楽はベン・オノノが作曲しました。特定の主題歌が有名ではありませんが、劇中ではスクリーミン・ジェイ・ホーキンズの「I Put a Spell on You」が使用されています。


受賞歴


インディペンデントのホラー映画であり、主要な映画賞の受賞歴は確認されていません。


撮影秘話


  • 映画は、アメリカ合衆国と南アフリカの共同製作であり、主に南アフリカのケープタウン郊外とステレンボッシュで撮影されました。
  • 当初は2020年8月28日に劇場公開される予定でしたが、COVID-19パンデミックの影響で延期され、最終的に2020年10月30日にデジタル配信されました。
  • 劇中に登場する陶器のペンギンの置物は、スティーヴン・キング原作のホラー映画『ミザリー』(1990年)へのオマージュであるとされており、同様の監禁状況と狂信的な看病人を描いている点で共通点が見られます。


感想


『スペル』は、フー・ドゥーの呪術という興味深い題材を扱ったサスペンスホラーです。足の怪我で身動きが取れない主人公が、狂信的な老婦人に監禁され、脱出を試みるという設定は、『ミザリー』を彷彿とさせます。ロレッタ・デヴァイン演じるエロイーズの怪演は特に見どころで、その不気味さと威圧感が映画の緊張感を高めています。ショッキングなシーンや、精神的に追い詰められる描写があり、ホラー映画として一定の評価を得ています。


レビュー


批評家からのレビューは賛否両論でした。ロレッタ・デヴァインの演技と、フー・ドゥーというユニークな題材は評価されたものの、物語の展開やキャラクター描写に深みが足りないという意見も見られました。一部の視聴者からは、強烈な視覚的要素や、主人公が絶望的な状況に陥る様が生々しく描かれている点が評価されています。


考察


この映画は、現代の合理的な思考を持つ人間が、原始的で土着的な呪術の世界に囚われたときに何が起こるかを描いています。主人公マーキスの「進歩的」な価値観と、エロイーズの「伝統的」な信仰が対立する構図は、文化的な衝突やアイデンティティの探求といったテーマを示唆しているとも言えます。また、極限状態での人間の精神状態や、家族の絆の強さも描かれています。


ラスト


(ネタバレを含みます)


マーキスは、フー・ドゥーの呪術人形である「フードゥー人形」に自分の肉体の一部を埋め込まれていることを知り、それを破壊しなければならないと理解します。エロイーズの魔の手から逃れ、家族と合流するために、彼は残された力を振り絞って闘います。

激しい攻防の末、マーキスはエロイーズの家を炎上させ、フー・ドゥー人形を破壊することに成功します。エロイーズは炎の中で最期を迎えます。マーキスは家族と再会し、保安官のジープに乗ってその場所を後にします。

ラストシーンでは、彼らが炎上する農場を背にして車で去っていく姿が映し出され、この恐ろしい ordeal(試練)を乗り越え、家族が一つになったことが示唆されます。しかし、その経験が彼らの心に大きな傷跡を残したことは明白であり、真の解放はまだ先にあるかもしれません。


視聴できるサイト


配信状況は変更される場合がありますので、各サービスの最新情報を確認してください。


まとめ


映画『スペル』(原題:Spell)は、飛行機事故で山奥に不時着したビジネスマンが、フー・ドゥーの呪術を信仰する謎の老婦人に監禁され、家族を救うために脱出を図るホラー・スリラーです。ロレッタ・デヴァインの怪演と、閉鎖的な空間での心理戦が特徴で、ショッキングな描写も含まれています。伝統的な信仰と現代人の対立を描きつつ、極限状態での人間の生存本能と家族の絆を問いかける作品です。