『グリーンブック』





概要


  • 原題: Green Book
  • 公開年: 2018年(日本では2019年公開)
  • 製作国: アメリカ
  • 監督: ピーター・ファレリー
  • 脚本: ニック・バレロンガ、ブライアン・カリー、ピーター・ファレリー
  • ジャンル: ドラマ、コメディ、実話に基づいた物語
  • 上映時間: 130分


あらすじ


1962年、ニューヨーク。イタリア系アメリカ人の用心棒トニー・“リップ”・バレロンガ(ヴィゴ・モーテンセン)は、ナイトクラブの仕事が一時的になくなったため、新たな職を探していました。そんな時、彼は一流の黒人ジャズピアニスト、ドクター・ドン・シャーリー(マハーシャラ・アリ)から、アメリカ南部のコンサートツアーの運転手兼ボディーガードの仕事を持ちかけられます。

人種差別が根強く残る南部を巡る旅に難色を示すトニーでしたが、高額な報酬に惹かれ、渋々ながら引き受けることに。ドン・シャーリーは、黒人旅行者向けのガイドブック「ザ・ニグロ・モーターリスト・グリーンブック」を頼りに旅を進めますが、二人は行く先々で様々な人種差別や偏見に直面します。

粗野で口の悪いトニーと、教養高く孤高なドン・シャーリー。出自も性格も全く異なる二人は、最初は反発し合いながらも、旅を続けるうちに次第に理解を深め、友情を育んでいきます。南部での過酷な経験を通して、それぞれが自身の偏見や価値観を見つめ直し、人間として成長していく感動的な物語です。


主なキャスト


  • ヴィゴ・モーテンセン as トニー・“リップ”・バレロンガ
  • マハーシャラ・アリ as ドクター・ドン・シャーリー
  • リンダ・カーデリーニ as ドロレス・バレロンガ(トニーの妻)
  • セバスチャン・マニスカルコ as ジョニー・ヴェンツ(トニーの義理の兄弟)
  • ディミター・マリンオフ as オレグ(ドン・シャーリーの楽団員)
  • マイク・ハットン as ジョージ(ドン・シャーリーの楽団員)


主題歌・楽曲


映画の音楽はクリス・バワーズが作曲しました。特定の主題歌というよりも、時代背景や感情を豊かに表現するスコアが印象的です。劇中では、ドン・シャーリーが演奏するクラシック音楽やジャズ、そして当時のポピュラー音楽などが効果的に使用されています。

  • 劇中で印象的に使用される楽曲の例:
    • "That Old Black Magic" (ルイ・プリマ)
    • "Tutti Frutti" (リトル・リチャード)
    • ドン・シャーリー自身が演奏するクラシック音楽やジャズの楽曲


受賞歴


『グリーンブック』は数々の映画賞を受賞し、高い評価を得ました。主な受賞歴は以下の通りです。

  • 第91回アカデミー賞:
    • 作品賞 (受賞)
    • 助演男優賞 (マハーシャラ・アリ) (受賞)
    • 脚本賞 (受賞)
    • 主演男優賞 (ヴィゴ・モーテンセン) (ノミネート)
    • 編集賞 (ノミネート)
  • 第76回ゴールデングローブ賞:
    • 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門) (受賞)
    • 助演男優賞 (マハーシャラ・アリ) (受賞)
    • 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門) (ヴィゴ・モーテンセン) (ノミネート)
    • 脚本賞 (ノミネート)
  • 英国アカデミー賞 (BAFTA):
    • 主演男優賞 (ヴィゴ・モーテンセン) (ノミネート)
    • 助演男優賞 (マハーシャラ・アリ) (ノミネート)
    • オリジナル脚本賞 (ノミネート)
  • トロント国際映画祭:
    • 観客賞 (受賞)


撮影秘話


  • 映画は、ニック・バレロンガの父であるトニー・バレロンガとドン・シャーリーの実際にあった友情に基づいています。脚本は、ニック・バレロンガが生前に残した証言や、トニーが妻に宛てた手紙などを基に書かれました。
  • ヴィゴ・モーテンセンは、トニー・バレロンガを演じるにあたり、体重を増やし、イタリア系アメリカ人のアクセントを習得しました。
  • マハーシャラ・アリは、ドン・シャーリーのピアノ演奏の姿勢や話し方を研究し、役作りに臨みました。
  • 1960年代のアメリカ南部を再現するため、当時の車や衣装、風景などが細部にまでこだわって撮影されました。


感想


『グリーンブック』は、人種差別という重いテーマを扱いながらも、ユーモアと温かい人間ドラマを通して、観る者の心に深く訴えかける作品です。ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの演技は圧巻で、全く異なる二人の間に育まれる友情は感動的です。時代背景や社会問題を丁寧に描きながらも、エンターテイメントとしても楽しめる、心に残るロードムービーです。


レビュー


批評家からの評価は非常に高く、多くの映画賞を受賞しました。ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの演技、脚本、監督、そして作品全体のテーマが高く評価されました。観客からも共感を呼び、口コミで広がり、ロングランヒットとなりました。人種差別というテーマを扱いながらも、希望や人間性の光を描いている点が多くの人に支持されました。

考察

『グリーンブック』は、1960年代のアメリカ南部における人種差別の実態を、白人の用心棒と黒人のピアニストの視点から描いています。肌の色や社会的地位の違いを超えて、人間同士が理解し合い、友情を育んでいく過程を通して、偏見や差別がいかに不条理で愚かなものであるかを問いかけます。また、ドン・シャーリーが社会の中で直面する孤独や葛藤、トニーが自身の偏見に気づき変化していく姿を通して、人間の内面の成長を描いています。


ラスト


ネタバレを含みます

ツアーを終え、ニューヨークに戻ったトニーは、家族と温かいクリスマスを迎えます。そこに、思いがけない人物が訪れます。それはドン・シャーリーでした。最初はよそよそしかった二人でしたが、トニーの妻ドロレスの温かい歓迎もあり、二人は言葉を交わし、笑顔で抱き合います。

ラストシーンは、トニーとドン・シャーリーが同じ食卓を囲み、互いに認め合い、友情を深めている様子が描かれます。肌の色や社会的地位の違いを超えた、真の人間的な繋がりが、希望に満ちた形で示唆されます。


視聴できるサイト


配信状況は変更される場合がありますので、最新の情報は各配信サービスでご確認ください。


まとめ


『グリーンブック』は、1962年のアメリカ南部を舞台に、白人の用心棒と黒人のピアニストの間に育まれる友情を描いた、感動的で心温まるヒューマンドラマです。ヴィゴ・モーテンセンとマハーシャラ・アリの卓越した演技、ユーモアと感動が織り交ざった脚本、そして人種差別という重いテーマを扱いながらも希望を描く物語が、多くの観客の心を捉えました。数々の映画賞を受賞した、必見の作品です。