映画『アイム・ノット・シリアルキラー』(原題:I Am Not a Serial Killer)







概要


  • 原題: I Am Not a Serial Killer
  • 邦題: アイム・ノット・シリアルキラー
  • 公開年: 2016年(日本公開は2017年)
  • 製作国: イギリス、アイルランド
  • 監督: ビリー・オブライエン
  • 脚本: ビリー・オブライエン、クリストファー・ハイドン(ダン・ウェルズの同名小説に基づく)
  • ジャンル: スリラー、ホラー、ドラマ、インディペンデント
  • 上映時間: 104分
  • 映倫指定: R15+




あらすじ


アメリカ中西部の小さな雪深い田舎町。ジョシュ・クライトン(マックス・レコーズ)は、どこにでもいるような高校生ではない。彼は自分がサイコパスであると自覚しており、いつかシリアルキラーになるのではないかと危惧し、懸命にその衝動を抑えようと努めている。彼の母親(ローラ・フレイザー)は死体安置所の経営者で、ジョシュはそこでアルバイトをしており、解剖を通じて死体への理解を深めている。

ジョシュは、自身の異常な衝動をコントロールするため、セラピストのロバブ(カール・ジーゲルマン)に通い、厳格なルールを設け、日常的に自己分析を繰り返している。そんな町で、不気味な連続殺人事件が発生する。被害者は内臓を抜き取られるという残忍な手口で殺されており、町の人々は恐怖に震える。

警察の捜査が進まない中、ジョシュは持ち前の死体に関する知識と、サイコパスとしての特異な視点から、犯人は人間ではない何か、あるいは人知を超えた存在ではないかと疑い始める。そして彼は、隣に住む物静かな老人、クリーヴァー氏(クリストファー・ロイド)の行動に不審な点を見出し、単独で彼を追跡し始める。

ジョシュは、自分がサイコパスであるという事実と、目の前で起こる異様な殺人事件の真相との間で葛藤しながら、狂気に満ちた犯人と対峙していくことになる。


主なキャスト


  • ジョシュ・クライトン: マックス・レコーズ
  • クリーヴァー氏: クリストファー・ロイド
  • ゲイル・クライトン(ジョシュの母): ローラ・フレイザー
  • ロバブ医師: カール・ジーゲルマン
  • ブルック・クライトン(ジョシュの妹): ディー・ハインツ
  • デニス・パーカー保安官: マイク・バーガー


主題歌・楽曲


この映画の音楽はジョン・ミッチェルが担当しています。特定の主題歌や劇中歌がフィーチャーされているという情報はありません。映画の不気味で陰鬱な雰囲気を強調するような、ミニマルでゾッとするスコアが特徴です。


受賞歴


本作はインディペンデント映画として、様々な映画祭で高い評価を受け、いくつかの賞を受賞しています。

  • ファンタスティック・フェスト 2016:
    • 作品賞(受賞)
    • 監督賞(ビリー・オブライエン)(受賞)
    • 主演男優賞(クリストファー・ロイド)(受賞)
  • ロッテルダム国際映画祭 2016:
    • VR映画部門観客賞(ノミネート)


撮影秘話


  • 原作はダン・ウェルズによる同名の人気小説で、その独特な世界観を忠実に再現しようと試みられました。
  • 撮影は、アメリカ中西部のミネソタ州とダコタ州の国境付近で行われました。雪深い冬の風景が、映画の陰鬱で寂れた雰囲気を強調しています。
  • 主演のマックス・レコーズは、この複雑なティーンエイジャーのサイコパスという役柄を演じきるために、精神科医の協力も得ながら役作りを行ったと言われています。
  • クリストファー・ロイドは、これまでの明るい役柄とは一転した、ミステリアスで不気味な老人役を演じ、その演技は高く評価されました。


感想


『アイム・ノット・シリアルキラー』は、単なるホラーやスリラーにとどまらない、深く考えさせられる作品です。主人公ジョシュの「シリアルキラーになりたくない」という内面の葛藤が丁寧に描かれており、観客は彼に共感し、その奇妙な行動を追いかけずにはいられません。静かで不気味な雰囲気と、時折挟まれる残酷な描写が、観客を独特の世界観に引き込みます。ホラー要素だけでなく、ティーンエイジャーの成長物語としての側面も持ち合わせています。


レビュー


批評家からのレビューは非常に好意的でした。特に、クリストファー・ロイドとマックス・レコーズの演技、そして作品の独特な雰囲気と脚本が高く評価されました。Rotten Tomatoesでは93%の高評価を獲得しており、「独自の奇妙な魅力を持ち、主演の二人の印象的な演技によってさらに高められた、驚くほど満足のいくジャンルのブレンド」と評されています。静かで不気味な雰囲気の中で、人間(あるいは人間ではないもの)の闇に迫る点が多くの批評家を唸らせました。


考察


この映画は、サイコパスという診断を持つ少年が、より大きな「悪」に直面することで、自身の存在意義や人間の倫理について深く向き合う物語です。クリーヴァー氏の存在は、ジョシュにとって自身の未来を映す鏡であり、また乗り越えるべき試練でもあります。映画は、善悪の境界線や、人間の本質とは何かという哲学的な問いを投げかけます。単なる連続殺人事件の解決だけでなく、主人公のアイデンティティの探求が描かれています。


ラスト


ネタバレを含みます


ジョシュは、クリーヴァー氏が単なる連続殺人犯ではなく、他者の生命エネルギーを吸い取ることで延命を図る、人間ではない「悪魔」のような存在であることを知ります。クリーヴァー氏もまた、自分が老いてその能力が衰え、生きるために殺人を繰り返すことへの苦悩を抱えていることが示唆されます。

最終的に、ジョシュはクリーヴァー氏と対峙し、激しい戦いの末、彼を倒します。この戦いは、ジョシュが自身の内に秘めた「シリアルキラー」になるかもしれないという恐怖と向き合い、それを乗り越えるための儀式のようにも描かれます。

ラストシーンでは、ジョシュが死体安置所の仕事を続ける日常に戻りますが、彼の顔には以前のような不安や葛藤が見られず、どこか吹っ切れたような、あるいは新たな使命を見出したような表情が浮かんでいます。彼はもはや自分がシリアルキラーになることを恐れておらず、クリーヴァー氏を倒したことで、自分が特別な存在であり、他の人間とは異なる方法で「悪」に対抗できる存在になったことを受け入れたかのように描かれます。これは、彼が自身の「闇」と向き合い、それを制御する道を選んだことを示唆する、希望的でありながらも不穏な結末となっています。


視聴できるサイト


  • Amazon Prime Video: レンタルまたは購入
  • U-NEXT: 見放題配信またはレンタル・購入
  • Hulu: 見放題配信(時期によって変動)
  • Google Play Movies & TV: レンタルまたは購入
  • YouTube Movies: レンタルまたは購入

配信状況は変更されることがありますので、各プラットフォームで最新の情報をご確認ください。


まとめ


映画『アイム・ノット・シリアルキラー』(原題:I Am Not a Serial Killer)は、自分がサイコパスであると自覚する少年が、連続殺人事件の真犯人を追う中で、人知を超えた存在と対峙する異色のスリラーです。マックス・レコーズとクリストファー・ロイドによる名演が光り、静かで不気味な雰囲気と、主人公の内面の葛藤が深く描かれています。単なるホラーに留まらず、人間性や悪の根源に迫る哲学的な要素も含まれており、多くの批評家から高い評価を受けました。予測不能な展開と、思春期の少年が自身の闇と向き合う成長物語が融合した、忘れがたい作品です。