映画『セリーナ 炎の女』(原題:Serena)







概要


  • 原題: Serena
  • 邦題: セリーナ 炎の女
  • 公開年: 2014年(日本公開は2018年2月17日)
  • 製作国: チェコ、フランス、アメリカ合衆国
  • 監督: スサンネ・ビア
  • 脚本: クリストファー・カイル(ロン・ラッシュの同名小説『セリーナ』に基づく)
  • ジャンル: ドラマ、ロマンス、スリラー、歴史
  • 上映時間: 109分




あらすじ


1929年、世界恐慌の時代のアメリカ、ノースカロライナ州の山岳地帯を舞台に、野心的な木材事業家ジョージ・ペンバートン(ブラッドリー・クーパー)と、その美しくも謎めいた妻セリーナ(ジェニファー・ローレンス)の物語が描かれます。

ジョージは木材帝国を築くため、セリーナと共に荒々しい開拓地でのビジネスに乗り出します。セリーナは、男社会である材木業の世界で、その美貌と知性、そして冷酷なまでに野心的な性格を武器に、ジョージを圧倒し、事業を拡大していきます。彼女は、材木の伐採から事業の運営まで、あらゆる面でジョージの右腕となり、時には彼を凌駕するほどの才覚を発揮します。

しかし、セリーナが妊娠できない体であることが判明すると、夫婦の関係に暗い影が落ち始めます。さらに、ジョージには過去に庶子がいることが明らかになり、セリーナの嫉妬と狂気が募っていきます。自分の地位や夫の愛が脅かされると感じたセリーナは、邪魔となる存在を次々と排除しようと、容赦ない行動に出るようになります。炎のような情熱と裏腹に、彼女の心は次第に冷酷な闇に包まれていくのです。


キャスト


  • セリーナ・ペンバートン: ジェニファー・ローレンス
  • ジョージ・ペンバートン: ブラッドリー・クーパー
  • ギャロウェイ: リス・エヴァンス
  • マクダウェル保安官: トビー・ジョーンズ
  • キャンベル: ショーン・ハリス
  • レイチェル: アナ・ウラル


主題歌・楽曲


映画の音楽は、ヨハン・セデルクヴィストが担当しています。特定の主題歌というよりも、時代背景と登場人物の心理状態を反映した、重厚でサスペンスフルなスコアが特徴です。


受賞歴


本作は、ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスという人気と実力を兼ね備えた俳優陣が主演を務めましたが、批評家からの評価が低く、残念ながら主要な映画賞の受賞歴はありません。


撮影秘話


  • 本作は、ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスが、『世界にひとつのプレイブック』(2012年)と『アメリカン・ハッスル』(2013年)に続いて、3度目の共演を果たした作品として注目されました。
  • 撮影は主にチェコ共和国で行われました。作中の材木伐採場やノースカロライナの町並みなどは、チェコにセットが組まれました。
  • 撮影は2012年に終了しましたが、編集作業に時間を要し、公開まで約2年の空白期間がありました。この長いポストプロダクション期間は、映画のトーンやストーリーの方向性について様々な調整があったことを示唆しています。
  • 監督のスサンネ・ビアは、『アフター・ウェディング』や『未来を生きる君たちへ』(アカデミー外国語映画賞受賞)などで知られるデンマークの監督です。


感想


『セリーナ 炎の女』は、ジェニファー・ローレンスの迫真の演技が光る作品です。彼女の演じるセリーナの美しさと恐ろしさ、そして内面の葛藤が印象的です。ブラッドリー・クーパーとの化学反応も期待されましたが、物語の展開やキャラクターの動機付けがやや不明瞭で、感情移入しにくいという意見も見られました。時代背景や映像美は評価できるものの、物語全体のまとまりに欠けると感じる視聴者もいるかもしれません。


レビュー


批評家からのレビューは非常に厳しいものでした。多くの批評家が、その豪華なキャスト陣と期待された監督にもかかわらず、脚本の弱さ、物語の散漫さ、そしてキャラクターの掘り下げ不足を指摘しました。特に、セリーナの狂気に至るまでの過程が十分に描かれていないという意見が多かったです。


考察


この映画は、男女の愛と野心が交錯する中で、人間がいかに変わっていくか、そしてその欲望がもたらす悲劇を描いています。セリーナの「炎の女」という邦題が示す通り、彼女の情熱と生命力は、事業の拡大には貢献するものの、私生活では嫉妬と支配欲へと転じ、やがてすべてを焼き尽くす炎となってしまいます。時代背景の厳しさと、それに対峙する人間の本性がテーマとなっていますが、その深掘りが十分ではない点が惜しまれます。


ラスト


ネタバレを含みます) 


セリーナは、ジョージの庶子である少年とその母親、そして彼らを匿っていた人々に、自分の計画通りに制裁を加えます。彼女の嫉妬と狂気は頂点に達し、邪魔者を完全に排除しようとします。しかし、最終的にセリーナ自身も、自分の行いによって引き起こされた報いを受けます。

ラストシーンでは、セリーナが、自分が火を放った山小屋の中で、もはや感情を失ったかのように座り込み、炎に包まれていく姿が描かれます。彼女は自分の手で全てを破壊し、自分自身をも滅ぼしてしまうという、悲劇的な結末を迎えます。


視聴できるサイト


これらのサービスでは、レンタルまたは購入での視聴が可能です。配信状況は地域や時期によって変動する可能性があるため、各プラットフォームで最新の情報をご確認ください。


まとめ


映画『セリーナ 炎の女』(原題:Serena)は、世界恐慌時代を舞台に、野心的な夫婦が木材事業を巡って愛と狂気に翻弄されるドラマティックな作品です。ジェニファー・ローレンスとブラッドリー・クーパーという豪華キャストの共演が話題となりましたが、物語の展開やキャラクター描写については賛否両論がありました。炎のような情熱と嫉妬が引き起こす悲劇を描いた作品として、その独特の雰囲気と主演二人の演技に注目して観ると良いでしょう。