『世界にひとつのプレイブック』
映画『世界にひとつのプレイブック』(Silver Linings Playbook)
概要
- 原題: Silver Linings Playbook
- 邦題: 世界にひとつのプレイブック
- 公開年: 2012年(米国)、2013年(日本)
- 製作国: アメリカ
- 監督: デヴィッド・O・ラッセル
- 脚本: デヴィッド・O・ラッセル(マシュー・クイックの同名小説に基づく)
- ジャンル: コメディ、ドラマ、ロマンス
- 上映時間: 122分
あらすじ
パット・ソリータ・ジュニア(ブラッドリー・クーパー)は、双極性障害を患い、8ヶ月間の精神病院での治療を終えて実家に戻ってきます。妻に浮気され、暴行事件を起こして入院した彼にとって、人生を立て直すことは容易ではありません。彼は妻ニッキーとの復縁を強く望み、ポジティブ思考を実践し、毎日ランニングを欠かしません。しかし、感情のコントロールが難しく、周囲との衝突が絶えません。
そんなある日、パットは友人の紹介でティファニー・マックスウェル(ジェニファー・ローレンス)と出会います。ティファニーもまた、夫を亡くした悲しみから立ち直れず、情緒不安定で過激な行動を取る問題児でした。最初は互いを嫌悪し合う二人ですが、ティファニーはパットにある取引を持ちかけます。それは、自分がダンスコンテストに出場するパートナーになってくれれば、妻ニッキーとの連絡を仲介してあげるというものでした。
ニッキーとの復縁を願うパットは、不承不承ながらもティファニーの申し出を受け入れ、奇妙なダンスの練習を始めます。共に時間を過ごすうちに、二人は自身の心の傷や苦しみを分かち合い、互いの欠点を受け入れながら、少しずつ変化していきます。この破天荒な二人の関係は、周囲の家族(特にパットの父親パット・シニア(ロバート・デ・ニーロ))をも巻き込みながら、それぞれの「プレイブック」(人生の攻略本)を書き換えていくことになります。
キャスト
- パット・ソリータ・ジュニア: ブラッドリー・クーパー
- ティファニー・マックスウェル: ジェニファー・ローレンス
- パット・ソリータ・シニア: ロバート・デ・ニーロ
- ドロレス・ソリータ: ジャッキー・ウィーヴァー
- ダニー・マクダニエルズ: クリス・タッカー
- ロニー: シェー・ウィガム
- ジェイク: ジョン・オーティス
- ニッキー: ジュリア・スタイルズ
主題歌・楽曲
映画の音楽はダニー・エルフマンが担当しています。特定の主題歌や劇中歌が前面に出ているというよりは、登場人物の心の機微や、映画全体のユーモラスで時に切ない雰囲気を彩るスコアが特徴です。
受賞歴
本作は数多くの賞にノミネートされ、特に以下の主要な賞を受賞しています。
- 第85回アカデミー賞:
- 主演女優賞: ジェニファー・ローレンス(当時22歳で、史上2番目の若さでの受賞)
- 第70回ゴールデングローブ賞:
- 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門): ブラッドリー・クーパー
- 第66回英国アカデミー賞(BAFTA):
- 脚色賞: デヴィッド・O・ラッセル
- 第18回クリティクス・チョイス・アワード:
- コメディ映画賞
- コメディ映画男優賞: ブラッドリー・クーパー
- コメディ映画女優賞: ジェニファー・ローレンス
- 全米映画俳優組合賞(SAG賞):
- キャスト賞(ノミネート)
- 全米製作者組合賞(PGA賞):
- 映画製作者賞(ノミネート)
撮影秘話
- 監督のデヴィッド・O・ラッセルは、自身の家族にも精神疾患を抱える者がいるため、この題材に深い思い入れを持っていました。脚本は、マシュー・クイックの原作小説を基にしながらも、自身の経験や考察を多く盛り込んでいます。
- ブラッドリー・クーパーは役作りのため、精神疾患について深く学び、また、パットのランニング習慣を表現するため、撮影前に大幅な減量とトレーニングを行いました。
- ジェニファー・ローレンスは、このティファニー役を演じるにあたり、大胆かつ繊細な演技が求められ、見事にこなしました。彼女は撮影時にブラッドリー・クーパーよりも若かったにも関わらず、成熟した演技で役を確立しました。
- ロバート・デ・ニーロは、パット・シニアという複雑なキャラクターを演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされるなど、高い評価を得ました。
感想
『世界にひとつのプレイブック』は、精神的な問題を抱えた人々が、互いの傷を受け入れ、支え合いながら再生していく姿を、ユーモラスかつ心温まる視点で描いた作品です。決して軽く扱われることのないデリケートなテーマを、監督の人間味あふれる演出と、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストの素晴らしい演技が、観客の心に深く響かせます。笑いと感動がバランス良く織り交ぜられており、見る者に希望を与えてくれるでしょう。
レビュー
批評家からのレビューは非常に好意的で、Rotten Tomatoesでは92%の高評価を得ており、「鋭く書かれ、エネルギッシュに監督され、演技も素晴らしい『世界にひとつのプレイブック』は、精神疾患を扱ったコメディドラマの繊細なバランスを取り、感動的な効果を生み出している」と評されています。Metacriticでも81/100のスコアで、「普遍的な賞賛」とされています。演技、脚本、演出の全てにおいて高い評価を受け、アカデミー賞の主要4部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞)全てにノミネートされた歴史的な作品となりました。
考察
本作は、精神疾患という重いテーマを扱いながらも、それを「克服すべきもの」としてではなく、「共に生きていくもの」として描いています。パットとティファニーは、完璧ではない自分自身を受け入れ、互いの欠点をも愛することで、真の幸福を見つけていきます。また、家族の絆、スポーツへの情熱、そして運命の出会いが、人生に新たな「プレイブック」をもたらす可能性を示唆しています。タイトルの「Silver Linings」は「どんな困難にも必ず希望がある」という意味であり、映画全体を貫くメッセージとなっています。
ラスト
(ネタバレを含みます)
映画のクライマックスは、パットとティファニーが参加するダンスコンテストのシーンです。彼らのダンスは完璧とは言えませんが、二人の感情と情熱が込められたパフォーマンスは、観客(特にパットの家族)の心を揺さぶります。
コンテスト後、パットの元妻ニッキーが会場に現れ、パットはティファニーがニッキーとの復縁を仲介していたことを知ります。しかし、パットはもはやニッキーへの執着よりも、ティファニーとの間に生まれた真のつながりを優先するようになっています。
パットがティファニーを追いかけ、互いの感情を打ち明け合った後、二人はキスを交わします。そして、パットの父親パット・シニアも、息子の変化と、自分の強迫観念と向き合うことを学び、家族全体が前向きな一歩を踏み出すことが示唆されます。
ラストは、二人が手を取り合い、新しい関係を築き始める希望に満ちた結末を迎えます。彼らは完璧な「治癒」を得たわけではありませんが、互いを見つけ、共に人生を歩むことで、それぞれが抱える問題を乗り越えていく力を得たのです。
視聴できるサイト
- U-NEXT(見放題配信)
- Amazon Prime Video(レンタル・購入)
- Google Play Movies & TV(レンタル・購入)
- YouTube Movies(レンタル・購入)
- Apple TV(レンタル・購入)
- Netflix(時期によって配信状況が変わることがあります)
正確な配信状況は、各プラットフォームでご確認ください。
まとめ
『世界にひとつのプレイブック』(原題:Silver Linings Playbook)は、精神的な問題を抱える男女が出会い、互いに支え合いながら再生していく姿を描いた、感動的なコメディ・ドラマ・ロマンスです。デヴィッド・O・ラッセル監督の繊細な演出と、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストの熱演が高く評価され、ジェニファー・ローレンスはアカデミー主演女優賞を受賞しました。ユーモアと感動が絶妙にブレンドされており、見る者に希望と勇気を与えてくれる、深く心に残る作品です。