『アンチグラビティ』
映画『アンチグラビティ』(原題:Coma)
概要
- 原題: Coma
- 邦題: アンチグラビティ
- 公開年: 2020年7月3日(日本公開)
- 製作年: 2019年
- 製作国: ロシア
- 監督: ニキータ・アルグノフ
- 脚本: ニキータ・アルグノフ、アレクセイ・グラヴィツキー、イリヤ・クルティク
- ジャンル: SF、アクション
- 上映時間: 111分
あらすじ
事故に遭った若き建築家(リナル・ムハメトフ)が目を覚ますと、そこは重力を無視して建物や地面が浮遊し、世界のあらゆる場所が再構築されたような異様な世界でした。彼は記憶を失っており、呆然としていると、突如として正体不明の「死神(リーバー)」と呼ばれる黒い怪物が襲いかかってきます。
間一髪で何者かに助けられた男は、ヤン(コンスタンチン・ラヴロネンコ)という人物が率いる生存者たちの隠れ家に案内されます。そこで男は、この世界が「昏睡状態の人間たちが暮らす脳内の世界」であり、彼ら自身も現実世界では昏睡状態にあることを知らされます。
この「コーマ」の世界では、現実の時間の100倍も遅く時間が流れており、彼らは現実世界で目覚めるまでこの世界から抜け出すことはできません。そして、リーバーと呼ばれる怪物が常に彼らを襲い、この世界で死ぬと現実世界でも目覚めることができなくなってしまいます。
男は自身の失われた記憶の中に、リーバーが存在しない「島」があるという秘密を隠していることを知らされ、ヤンたちと共にその真実を追うことになります。はたして彼らは、この幻想的で危険な世界から脱出し、現実世界で目覚めることができるのでしょうか?
キャスト
- 主人公(建築家): リナル・ムハメトフ
- ヤン: コンスタンチン・ラヴロネンコ
- フリッパー: アントン・パンプーシュニー
- ファンタム: ルボフ・アクショノーヴァ
- ミロシュ・ビコヴィッチ
主題歌・楽曲
この映画の音楽は、特定の主題歌がフィーチャーされているという情報はありません。SFアクションとして、映像世界を彩る壮大でミステリアスなスコアが使用されています。
受賞歴
主要な国際的な映画賞の受賞歴は確認できませんでしたが、その斬新なVFXやコンセプトから、一部のSFX関連の賞や、ロシア国内の映画祭での評価はあったかもしれません。
撮影秘話
- 本作は、その独創的なVFXが最大の魅力とされており、ロシア映画としては異例のスケールで、重力が歪んだ世界観や再構築された都市の様子が描かれています。
- 「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」のプロデューサー陣が手掛けており、ロシア映画の技術力の高さを示す一例として注目されました。
- クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』を彷彿とさせる「夢の中の世界」が舞台となっており、比較されることもあります。
感想
『アンチグラビティ』は、その唯一無二のビジュアルと世界観が最大の魅力です。重力がなく、建物が複雑に結合し、上下の感覚が歪んだ街の描写は、観客を強く引き込みます。物語は「インセプション」や「マトリックス」といった既存のSF作品に通じる要素を持ちつつも、ロシア独自の視点で描かれており、新鮮さを感じさせます。アクションも盛り込まれていますが、どちらかというと世界観を楽しむ「SF」に重点が置かれています。
レビュー
レビューは賛否両論に分かれます。VFXと映像美は多くの批評家や観客から高く評価され、「ロシア版インセプション」と称されることもありました。しかし、一方で物語の展開がやや複雑で理解しにくい、キャラクターの掘り下げが不足している、アクションシーンの迫力に欠けるといった意見も散見されました。総じて、映像体験としては満足度が高いものの、ストーリーテリングには改善の余地があると感じる人もいました。
考察
この映画は、昏睡状態にある人々の意識が共有する世界を描くことで、現実と非現実の境界線、記憶の曖昧さ、そして自己の存在意義といった哲学的テーマを探求しています。リーバーという怪物は、昏睡から覚めることを阻む、あるいは現実世界との繋がりを断ち切る存在として描かれ、夢と現実の狭間でのサバイバルを通して、人間の精神の強さや弱さを浮き彫りにしています。
ラスト
(ネタバレを含みます)
主人公の建築家は、自らの失われた記憶を辿り、ヤンたちのグループと共にリーバーのいない「島」へと向かいます。その過程で、この「コーマ」の世界の真の姿と、自身を含む彼らの現実世界での状況が明らかになります。
最終的に、主人公は昏睡状態から目覚めるための鍵となる真実を発見します。それは、彼が昏睡状態から覚めることで、この「コーマ」の世界が崩壊してしまうという残酷なものでした。彼は、仲間たちとこの世界に留まるか、現実世界に戻るかの究極の選択を迫られます。
ラストシーンでは、主人公が現実世界で目を覚まし、病院のベッドにいる姿が描かれます。しかし、彼が目覚めたことで「コーマ」の世界の仲間たちがどうなったのかは、曖昧なまま終わります。この結末は、現実と夢、生と死、そして自己犠牲というテーマを観客に問いかけます。
視聴できるサイト
- Amazon Prime Video
- U-NEXT
- Rakuten TV
- DMM TV
- ABEMA
- TELASA
レンタルまたは見放題の対象となっているかは、各プラットフォームでご確認ください。
まとめ
映画『アンチグラビティ』(原題:Coma)は、2019年製作のロシア製SFアクションで、2020年に日本で公開されました。昏睡状態にある人々の意識が共有する、重力が歪んだ幻想的な世界を舞台に、記憶を失った建築家が「死神(リーバー)」と呼ばれる怪物と戦いながら、真実と脱出の道を探る物語です。その圧倒的なVFXと独創的な世界観は高く評価されましたが、物語の複雑さには賛否両論がありました。現実と非現実、生と死といったテーマを深く掘り下げた、見応えのあるSF作品です。