『シックス・ストリング・サムライ』
映画『シックス・ストリング・サムライ』(Six-String Samurai)
概要
- 原題: Six-String Samurai
- 邦題: シックス・ストリング・サムライ
- 公開年: 1998年 (日本公開は2000年)
- 製作国: アメリカ合衆国
- 監督: ランス・マンギア
- 脚本: ランス・マンギア、ジェフリー・ファルコ
- ジャンル: SF、アクション、コメディ、アドベンチャー、西部劇、ミュージカル(ロックンロール・ロードムービー)
- 上映時間: 91分
あらすじ
ロシアが核攻撃によってアメリカを壊滅させた後の、架空の1957年。旧アメリカ大陸は荒廃し、わずかに残された人類は「ラスベガス」を新たな首都としていました。しかし、そのラスベガスを統治していたのは、偉大なるロックンロールの王、エルヴィス・プレスリーその人でした。
そんな中、エルヴィスが亡くなったという知らせが届き、ラスベガスは新たな王の座を巡る争奪戦に突入します。王の座を継ぐことができるのは、最も優れたギターの腕と剣の技を持つ者だけ。多くのサムライたちがラスベガスを目指して荒野を旅する中、一人の奇妙な男がいました。
彼の名はバディ(ジェフリー・ファルコン)。エルヴィス風のギターを背負い、刀を腰に差した彼は、まるで失われた時代のヒーローのようです。道中、彼は両親を失った幼い少年(ジャスティン・マクガイア)と出会い、成り行きで行動を共にすることになります。
バディは、追ってくるレッド・エルヴィス率いるロックンローラー集団や、他の個性的なサムライたち、そして荒野に潜む危険な存在と戦いながら、ラスベガスへの道を切り拓いていきます。彼の目的はただ一つ、王の座に就き、ロックンロールを再び世界に響かせることでした。
主なキャスト
- バディ: ジェフリー・ファルコ
- 少年: ジャスティン・マクガイア
- デス: レッド・エルヴィス
- その他、多くのユニークなキャラクターが登場
主題歌・楽曲
この映画は、エルヴィス・プレスリーへのオマージュが強く、全編にわたって彼の音楽が重要な役割を果たしています。
- 劇中音楽: 主にアメリカのロカビリーやサーフロックなどのジャンルの楽曲が多用されています。特に、1950年代のロックンロールや、サーフロックのバンド「The Red Elvises」の楽曲が多数使用されており、映画の雰囲気を強く形成しています。
- The Red Elvises: 監督のランス・マンギアは、このバンドの楽曲に惚れ込み、彼らを映画に起用。実際に劇中にも「レッド・エルヴィス」という名前のキャラクターとしてバンドメンバーが登場し、印象的なパフォーマンスを披露しています。そのため、主題歌というよりは、バンドそのものが映画のサウンドトラックの中核をなしています。
受賞歴
- スラムダンス映画祭 1998: 観客賞(長編映画部門)
- ファンタスポルト(ポルト国際映画祭) 1999: 最優秀ファンタジー映画賞
撮影秘話
- 本作は非常に低予算で製作されたインディペンデント映画です。限られた予算の中で、砂漠や廃墟を巧みに利用し、核戦争後の荒廃した世界観を表現しています。
- ロケーション撮影は、カリフォルニア州のデスバレーなど、アメリカ西部の広大な砂漠地帯で行われました。
- 主演のジェフリー・ファルコは、実際にミュージシャン(The Red Elvisesのフロントマン)であり、彼の音楽的才能と個性的なルックスが、バディというキャラクターに説得力と魅力を与えています。
- 監督のランス・マンギアは、黒澤明監督の『用心棒』や、セルジオ・レオーネ監督のマカロニ・ウェスタン、さらには日本の特撮やアニメーションからの影響を公言しており、それらの要素が随所に見て取れます。
感想
『シックス・ストリング・サムライ』は、その唯一無二の世界観とスタイルで、観る者に強烈な印象を残すカルト映画です。核戦争後の世紀末的な世界に、エルヴィス風のロックンロールと侍の要素を融合させた設定は、まさに奇想天外。低予算ながらも、監督のビジョンとアイデアが詰まっており、独特のユーモアとシュールさが魅力です。万人受けする作品ではありませんが、B級映画やカルト映画、あるいは音楽映画が好きなら、他に類を見ない体験ができるでしょう。
レビュー
批評家からのレビューは賛否両論ありましたが、そのオリジナリティとスタイルは高く評価されました。特に、低予算ながらも作り込まれた世界観、印象的なアクション、そして音楽の使い方は多くの批評家から称賛されました。「マッドマックス」と「エルヴィス・プレスリー」、そして「チャンバラ」を組み合わせたような作品として、カルト映画ファンに強く支持されています。
考察
この映画は、単なるSFアクションにとどまらず、アメリカ文化の象徴であるロックンロール(エルヴィス)と、東洋の武士道(サムライ)の融合というユニークなテーマを探求しています。荒廃した世界で、音楽が最後の希望であり、生きる指針となるというメッセージが込められています。また、主人公バディと少年の間に芽生える父性的な絆も、物語の重要な要素となっています。
ラスト
(ネタバレを含みます)
バディはついにロスト・ベガスに到着します。しかし、そこで彼は、次なる王となるために、最後の対決の相手、強敵の『デス』を倒し、乗り越えなければなりません。
激しいギターバトルと剣の戦いの末、バディはデスを打ち破ります。しかし、バディも戦いによって力尽きます。
そして少年は、バディのギターと眼鏡を引き継ぎます。少年がベガスへ向かう姿を映し出し、ロックンロールの精神が世代を超えて永遠に続いていくことを示唆して終わります。
視聴できるサイト
まとめ
映画『シックス・ストリング・サムライ』は、1998年製作のカルト的なSFアクション・コメディです。核戦争後のアメリカを舞台に、エルヴィス・プレスリーの遺志を継ぐべく、ギターと刀を手にラスベガスを目指す謎のサムライ、バディの旅を描いています。ロカビリーバンド「The Red Elvises」による音楽が作品の核となり、独特の世界観とシュールなユーモア、スタイリッシュなアクションが融合した、唯一無二の魅力を持つ作品です。低予算ながらも、その独創性で熱狂的なファンを獲得し、スラムダンス映画祭で観客賞を受賞するなど、高い評価を得ています。