『ルーム』
映画『ルーム』(原題:Room)
概要
- 原題: Room
- 邦題: ルーム
- 公開年: 2015年 (日本公開は2016年)
- 製作国: アイルランド、カナダ、アメリカ、イギリス
- 監督: レニー・エイブラハムソン
- 脚本: エマ・ドナヒュー (自身の同名小説に基づく)
- ジャンル: ドラマ、スリラー
- 上映時間: 118分 (1時間58分)
あらすじ
24歳の母親ジョイ(ブリー・ラーソン)と、5歳になる息子のジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)は、「ルーム」と呼ばれる小さな部屋で暮らしています。ジャックにとって、この部屋が世界のすべてであり、天井のスカイライトから見える空も、テレビに映る世界も、すべては架空のものだと思って育ちました。ジョイは彼に、外の世界の危険性や、「ルーム」が彼らの安全な場所であると教えていました。
しかし、この「ルーム」は、ジョイが17歳の時に「オールド・ニック」と呼ばれる男(ショーン・ブリジャース)に誘拐され、監禁されてから7年間、閉じ込められていた場所でした。ジャックは、その監禁中にジョイが産んだ子供だったのです。
ジョイは、ジャックに外の世界の存在を少しずつ教え始め、彼が5歳になったことを機に、この監獄からの脱出計画を立てます。ジャックの無垢な視点と、母親の強い愛と知恵が、彼らを自由へと導く唯一の希望でした。
脱出に成功したジョイとジャックは、生まれて初めて見る外の世界と、元の生活に戻ろうとする過程で、精神的にも肉体的にも大きな困難に直面します。特に、ジャックは広大で未知の世界に適応することに苦労し、ジョイはトラウマと世間の目の中で、母としての役割を再構築しようとします。
主なキャスト
- ジョイ(ママ): ブリー・ラーソン (Brie Larson)
- ジャック: ジェイコブ・トレンブレイ (Jacob Tremblay)
- ママの父(祖父): ウィリアム・H・メイシー (William H. Macy)
- ママの母(祖母): ジョアン・アレン (Joan Allen)
- オールド・ニック: ショーン・ブリジャース (Sean Bridgers)
- Dr. ミットシー: ウェンディ・クルーソン (Wendy Crewson)
主題歌・楽曲
映画の音楽は、スティーヴン・レニックスが手掛けています。特定の主題歌や挿入歌がフィーチャーされているという情報はありませんが、物語の感情的な深さや登場人物の心理状態を繊細に表現するスコアが特徴です。
受賞歴
『ルーム』は高い評価を受け、数々の著名な賞を受賞しました。
- 第88回アカデミー賞:
- 主演女優賞 (ブリー・ラーソン) 受賞
- 作品賞 ノミネート
- 監督賞 (レニー・エイブラハムソン) ノミネート
- 脚色賞 (エマ・ドナヒュー) ノミネート
- 第73回ゴールデングローブ賞:
- 主演女優賞 (ドラマ部門、ブリー・ラーソン) 受賞
- 作品賞 (ドラマ部門) ノミネート
- 脚本賞 ノミネート
- 第69回英国アカデミー賞 (BAFTA):
- 主演女優賞 (ブリー・ラーソン) ノミネート
- 脚色賞 ノミネート
- 第21回クリティクス・チョイス・アワード:
- 主演女優賞 (ブリー・ラーソン) 受賞
- 若手俳優賞 (ジェイコブ・トレンブレイ) 受賞
- トロント国際映画祭2015:観客賞 受賞 など
撮影秘話
- 原作者のエマ・ドナヒューは、実際に監禁された女性が子供を産んだ事件にインスパイアされてこの物語を執筆しました。
- 映画の序盤で描かれる「ルーム」のセットは、非常に狭い空間(約3.5m x 3.5m)で、壁や家具もすべて監禁設定に合わせて作られました。この限られた空間での撮影は、役者やスタッフに大きな挑戦でした。
- 特にジャック役のジェイコブ・トレンブレイの演技は絶賛され、彼が本当にこの部屋で育ったかのように見せるために、監督と徹底的な準備が行われました。彼の視点を通して物語が進むため、彼の感情表現が非常に重要でした。
- 撮影は、監禁されている「ルーム」のシーンと、脱出後の外の世界のシーンで、監督のアプローチやカメラワークが意図的に変えられています。これにより、ジャックが体験する世界の変化を視覚的に表現しています。
感想
『ルーム』は、観終わった後も深く心に残る、非常にパワフルで感動的な作品です。前半の「ルーム」での生活は息が詰まるような緊張感があり、閉鎖的な空間での母親と子の愛情の深さに胸を打たれます。そして、脱出後の外の世界での適応と、その中で直面する困難が、さらに物語に奥行きを与えています。ブリー・ラーソンの鬼気迫る演技と、ジェイコブ・トレンブレイの奇跡的な演技は、この映画を傑作へと押し上げています。希望と絶望、そして母の無償の愛が描かれ、人間の強さと回復力を感じさせられます。
レビュー
批評家からのレビューは非常に高く評価されています。「Rotten Tomatoes」では93%の支持率を獲得し、「感情的に力強く、見事に演じられた『ルーム』は、衝撃的でありながらも最終的には希望に満ちた体験を届ける」と評されています。Metacriticでは86/100のスコアで、「世界的な評価」を受けています。特に、ブリー・ラーソンの演技はキャリアの最高傑作とされ、アカデミー賞受賞も納得の出来栄えとされています。
考察
この映画は、物理的な監禁からの脱出だけでなく、心理的な解放と回復の物語でもあります。ジャックの視点を通して、世界を再発見する純粋な喜びと、それに伴う混乱が描かれ、我々が当たり前だと思っている「世界」の概念を問い直させられます。また、母親のトラウマとの闘い、そして子供を守るためにどこまでも強くあろうとする母親の姿は、人間性の奥深さを浮き彫りにしています。真の自由とは何か、そして家族の絆の強さが、深く考察できる作品です。
ラスト
(ネタバレを含みます)
脱出後、ジョイとジャックは病院で治療を受け、その後、ジョイの実家で保護されます。しかし、長期間の監禁生活と、メディアからの過剰な注目、そして家族とのぎくしゃくした関係により、ジョイは精神的に追い詰められ、自殺未遂を起こしてしまいます。
ジャックは、母親の精神的な苦悩を幼いながらも感じ取り、ジャックの純粋な存在が、ジョイにとって生きる希望となります。
最終的に、ジョイとジャックは、警官の付き添いのもと、かつて監禁されていた「ルーム」を再訪します。ジャックはもう部屋を「世界」とは見なさず、ただの「部屋」として認識しています。二人は過去の場所と向き合い、別れを告げることで、新たな人生の一歩を踏み出します。
ラストシーンは、二人が「ルーム」を後にし、手を取り合って歩き去る姿で終わります。これは、彼らが過去のトラウマを完全に克服したわけではないものの、互いの存在を支えに、前向きに生きていこうとする希望に満ちた未来を示唆しています。
視聴できるサイト
- Amazon Prime Video
- U-NEXT
- Netflix
- Hulu
- Google Play Movies & TV
- YouTube Movies
これらのサービスでは、レンタルまたは購入での視聴が可能です。具体的な配信状況は、各プラットフォームでご確認ください。
まとめ
映画『ルーム』(原題:Room)は、7年間監禁された母親と、そこで生まれた5歳の息子の脱出と、その後の新しい世界への適応を描いた、感動的で衝撃的なヒューマンドラマです。ブリー・ラーソンとジェイコブ・トレンブレイの息をのむような演技は高く評価され、ブリー・ラーソンはアカデミー主演女優賞を受賞しました。希望、絶望、そして母子の無償の愛が深く描かれ、観る者の心に強い印象を残す傑作です。