『アメリカン・ハッスル』
映画『アメリカン・ハッスル』(原題:American Hustle)
概要
- 原題: American Hustle
- 邦題: アメリカン・ハッスル
- 公開年: 2013年(日本公開:2014年1月31日)
- 製作国: アメリカ
- 監督: デヴィッド・O・ラッセル
- 脚本: エリック・ウォーレン・シンガー、デヴィッド・O・ラッセル
- ジャンル: クライム、ドラマ、コメディ、伝記(実話を基にしたフィクション)
- 上映時間: 138分
あらすじ
1970年代後半のニューヨーク。天才的な詐欺師アーヴィン・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベール)は、愛人のシドニー・プロッサー(エイミー・アダムス)と共に、巧みな手口で詐欺を働いていました。しかし、彼らはある日、FBI捜査官のリッチー・ディマソ(ブラッドリー・クーパー)に逮捕されてしまいます。
リッチーは、アーヴィンの詐欺の腕を利用し、腐敗した政治家やマフィアを罠にかけるための大規模なFBIおとり捜査「アブスキャム(Abscam)作戦」への協力を持ちかけます。逮捕を免れるため、渋々ながら協力することになったアーヴィンとシドニーは、架空のアラブの大富豪を装い、ニュージャージー州の有力な政治家や組織と接触していきます。
しかし、アーヴィンの予測不能な妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)が事態をさらに複雑にし、リッチーの野心的な行動が計画を危うくしていきます。誰が騙し、誰が騙されているのか。嘘と裏切りが渦巻く中で、彼らは生き残り、己の目的を達成できるのでしょうか。
キャスト
- アーヴィン・ローゼンフェルド: クリスチャン・ベール
- シドニー・プロッサー: エイミー・アダムス
- リッチー・ディマソ: ブラッドリー・クーパー
- ロザリン・ローゼンフェルド: ジェニファー・ローレンス
- カーマイン・ポリート: ジェレミー・レナー
- ヴィクター・テルマ: ルイス・C・K
- スタッキー: ジャック・ヒューストン
- アル・フォンテーヌ: ロバート・デ・ニーロ(カメオ出演)
主題歌・楽曲
映画の音楽は、主に1970年代後半のヒット曲が効果的に使用されています。ディスコやロック、ソウルミュージックなど、当時の雰囲気を色濃く反映した楽曲が多数採用されており、サウンドトラックも高い評価を得ています。特定の主題歌はありませんが、物語のムードを盛り上げる重要な要素となっています。
受賞歴
『アメリカン・ハッスル』は、その年の賞レースを席巻し、数多くの主要な映画賞にノミネート・受賞しました。
- 第71回ゴールデングローブ賞: 作品賞(コメディ/ミュージカル部門)、主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門 - エイミー・アダムス)、助演女優賞(ジェニファー・ローレンス)の3部門を受賞。
- 第86回アカデミー賞: 作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(クリスチャン・ベール)、主演女優賞(エイミー・アダムス)、助演男優賞(ブラッドリー・クーパー)、助演女優賞(ジェニファー・ローレンス)など、主要10部門でノミネートされるも、受賞はならず。
- 英国アカデミー賞(BAFTA): オリジナル脚本賞、助演女優賞(ジェニファー・ローレンス)、メイクアップ&ヘア賞を受賞。
- 全米映画俳優組合賞(SAG): キャスト賞(アンサンブル演技賞)を受賞。
撮影秘話
- 本作は、1970年代のFBIおとり捜査「アブスキャム事件」を基にしていますが、監督のデヴィッド・O・ラッセルは「実話を基にしたフィクション」と強調し、登場人物や展開に大胆な脚色を加えています。
- キャスト陣の徹底した役作りが話題となりました。クリスチャン・ベールは役作りのため大幅に体重を増やし、独特の髪型も披露しています。
- 衣装や美術も1970年代の雰囲気を再現するために細部までこだわり、当時のファッションや生活様式を色濃く反映させています。
- 監督のデヴィッド・O・ラッセルは、過去にも本作の主要キャスト(クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス)と何度も組んでおり、お互いの信頼関係が作品に良い影響を与えています。
感想
『アメリカン・ハッスル』は、1970年代の華やかな雰囲気と、詐欺師たちの狡猾な駆け引き、そして人間関係の複雑さが入り混じった、非常に魅力的な作品です。演技派俳優たちのアンサンブル演技は圧巻で、特にクリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンスの4人の化学反応が素晴らしいです。ユーモアとサスペンス、そして時折顔を出す哀愁が絶妙にブレンドされており、最後まで目が離せません。
レビュー
批評家からの評価は非常に高く、Rotten Tomatoesでは92%の高評価(2025年6月時点)を得ています。「スマートで、面白く、そして豪華な『アメリカン・ハッスル』は、素晴らしい演技とデヴィッド・O・ラッセル監督の巧みな演出によって、混乱した時代を生き生きと描いている」と評価されています。Metacriticでも90/100のスコアで、「普遍的な称賛」を受けています。物語の面白さ、演出の切れ味、そして何よりもキャスト陣の演技が絶賛されました。
考察
本作は単なるクライム映画に留まらず、アイデンティティ、欲望、そして自己欺瞞といったテーマを深く掘り下げています。登場人物たちは皆、何らかの形で「ハッスル」(騙し、ごまかし、奮闘する)しており、それは詐欺師やFBI捜査官だけでなく、彼らの内面にも共通しています。1970年代という時代背景が、当時の退廃と変化のムードを表現しており、人々が成功や自己実現のために何を選択するのかという普遍的な問いを投げかけています。
ラスト
(ネタバレを含みます)
最終的に、アーヴィンとシドニーは、リッチーの野心的な計画が暴走し、彼ら自身が危険にさらされることを予見します。彼らは、FBIのボスに取引を持ちかけ、自分たちの罪を軽減する代わりに、リッチーが仕組んだおとり捜査の違法な部分や、彼自身の不正行為を暴露します。
アーヴィンとシドニーは、自分たちの手で事件を収束させ、リッチーを出し抜きます。リッチーは左遷され、彼の野望は潰えます。一方で、カーマイン・ポリートは政治家生命を絶たれますが、アーヴィンは彼との間に友情に近い感情を抱いていたため、彼を助けるための何らかの措置を取ったことが示唆されます(例えば、詐欺を続けるための偽の取引をポリートに持ちかけるなど)。
ラストシーンでは、アーヴィンとシドニーが、詐欺師としての腕を活かして、新しいビジネスを始める姿が描かれます。彼らは、法とグレーゾーンの間で、自分たちの生き方を見つけ出し、ある種の幸福を手に入れたように見えます。ロザリンは別れて新しい人生を歩み始めますが、アーヴィンとの関係は完全に断ち切られたわけではないことが示唆されます。映画全体が語り手であるアーヴィンとシドニーの視点で語られるため、彼らがどこまで正直に話しているのか、最後まで曖昧さが残る結末となっています。
視聴できるサイト
- Amazon Prime Video
- U-NEXT
- Netflix
- Hulu
- Google Play Movies & TV
- YouTube Movies
- Lemino
これらのサービスでは、レンタルまたは購入での視聴が可能です。配信状況はプラットフォームや時期によって変動する場合がありますので、各サービスの最新情報をご確認ください。
まとめ
映画『アメリカン・ハッスル』は、1970年代後半のFBIおとり捜査「アブスキャム事件」を大胆に脚色した、デヴィッド・O・ラッセル監督のクライム・ドラマ・コメディです。クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンスという豪華キャストが、個性豊かな詐欺師とFBI捜査官を演じ、複雑な人間関係と予測不能な駆け引きを繰り広げます。数々の映画賞にノミネート・受賞し、批評家からも絶賛された、スタイリッシュでユーモアに満ちた傑作です。