『ジョーカー』





概要


  • 原題: Joker
  • 公開年: 2019年
  • 製作国: アメリカ
  • 監督: トッド・フィリップス
  • 脚本: トッド・フィリップス、スコット・シルヴァー
  • ジャンル: ドラマ、犯罪、スリラー
  • 上映時間: 122分


あらすじ


1980年代のゴッサム・シティ。孤独で社会から疎外されたアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、コメディアンになることを夢見ながら、病気の母ペニー(フランセス・コンロイ)と二人暮らしをしている。彼は、人々を笑顔にしようと努める一方で、社会の冷酷さや自身の抱える精神的な問題を抱え苦悩している。

生活は厳しく、アーサーはピエロの格好で日雇いの仕事をする日々を送っている。ある日、地下鉄で理不尽な暴行を受けたことをきっかけに、彼は衝動的に犯人を射殺してしまう。この事件は社会の底辺に鬱積していた不満を爆発させ、ゴッサム・シティは騒乱へと向かっていく。

事件後、アーサーは次第に自身の内なる狂気に身を委ねていく。彼の行動はエスカレートし、やがて彼は、ゴッサム・シティの象徴的な悪役、ジョーカーへと変貌していく。彼の変貌は、社会の矛盾と不正が生み出した悲劇であり、同時に、抑圧された人々の怒りの象徴となっていく。


主なキャスト


  • ホアキン・フェニックス as アーサー・フレック / ジョーカー
  • ロバート・デ・ニーロ as マレー・フランクリン
  • ザジー・ビーツ as ソフィー・デュモンド
  • フランセス・コンロイ as ペニー・フレック
  • ブレット・カレン as トーマス・ウェイン
  • シェー・ウィガム as バーク刑事
  • ビル・キャンプ as ギャリティ刑事


主題歌・劇中歌


映画には特定の主題歌はありませんが、劇中で印象的に使用されている楽曲がいくつかあります。

  • "Smile" - ジミー・デュランス(ナット・キング・コールのカバーが特に印象的)
  • "That's Life" - フランク・シナトラ
  • "White Room" - クリーム
  • 映画のスコアは、ヒドゥル・グドナドッティルが作曲しており、陰鬱で不安定な雰囲気を醸し出しています。


受賞歴


『ジョーカー』は数々の賞を受賞し、高い評価を得ました。主な受賞歴は以下の通りです。

  • 第92回アカデミー賞: 主演男優賞(ホアキン・フェニックス)、作曲賞(ヒドゥル・グドナドッティル)
  • 第77回ゴールデングローブ賞: 主演男優賞(ドラマ部門)(ホアキン・フェニックス)、作曲賞
  • 第76回ヴェネツィア国際映画祭: 金獅子賞(最高賞)
  • 英国アカデミー賞 (BAFTA): 主演男優賞(ホアキン・フェニックス)、作曲賞、キャスティング賞


撮影秘話


  • 監督のトッド・フィリップスは、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』や『キング・オブ・コメディ』といった1970年代のニューシネマ作品から大きな影響を受けたと語っています。
  • ホアキン・フェニックスは、役作りのために大幅な減量を行い、アーサーの孤独や飢餓感を体現しました。
  • 撮影は主にニューヨーク市とその周辺で行われ、ゴッサム・シティの退廃的な雰囲気をリアルに描き出しています。
  • 即興的な演技も多く取り入れられ、ホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技を引き出しました。


感想


『ジョーカー』は、単なるスーパーヴィランのオリジンストーリーに留まらず、社会の病巣や人間の内面に深く切り込んだ衝撃的な作品です。ホアキン・フェニックスの圧倒的な演技は圧巻で、観る者の心を深く揺さぶります。社会の不条理、精神疾患、貧困といったテーマが重層的に描かれ、観る人によって様々な解釈が生まれるでしょう。賛否両論を巻き起こしましたが、その芸術性と社会的なメッセージ性の強さから、映画史に残る一作と言えます。


レビュー


批評家からの評価は非常に高く、特にホアキン・フェニックスの演技は絶賛されました。ヴェネツィア国際映画祭での金獅子賞受賞をはじめ、数々の映画賞を受賞しています。一方で、その暴力的描写や社会に対するメッセージの解釈については議論も起こりました。しかし、多くのレビューで、その映像美、音楽、そして主演俳優の演技が高く評価されています。


考察


『ジョーカー』は、単なる悪役の誕生を描くのではなく、社会の構造的な問題が個人をどのように追い詰めていくのかを描いています。貧困、精神疾患への無理解、格差といった現代社会が抱える問題を背景に、アーサー・フレックという一人の男がジョーカーへと変貌していく過程は、観る者に深い問いを投げかけます。また、善悪の境界線や、狂気と正気の曖昧さについても考えさせられる作品です。


ラスト


ネタバレを含みますのでご注意ください

物語の終盤、アーサーは人気トーク番組「マレー・フランクリン・ショー」に出演し、生放送中に自身の犯した殺人について告白し、マレーを射殺します。この衝撃的な事件は、ゴッサム・シティで大規模な暴動を引き起こし、アーサーは貧困層の象徴的な存在として祭り上げられます。

逮捕されたアーサーは、精神病院のような施設でセラピストと面会しています。彼は過去の出来事を回想し、時折意味深な笑みを浮かべます。セラピストが「何がおかしい?」と尋ねると、アーサーは「ただ、面白いことを考えたんだ」と答えますが、それが何なのかは語りません。

ラストシーンでは、血の足跡を残しながら廊下を歩くアーサーの姿が映し出され、物語は幕を閉じます。このラストは、彼の語る出来事が現実だったのか、それとも彼の妄想だったのか、観る者に解釈の余地を残しています。ジョーカーとしての彼の狂気は、もはや誰にも止められないことを示唆しているとも言えるでしょう。


視聴できるサイト


  • 定額見放題サービス:
    • U-NEXT
    • Hulu
    • Netflix (配信状況は変更される場合があります)
    • Amazon Prime Video (レンタルまたは購入の場合あり)
  • レンタル/購入サービス:

配信状況は各サービスで随時変更されるため、最新の情報をご確認ください。


まとめ


映画『ジョーカー』は、ホアキン・フェニックスの圧倒的な演技と、社会の闇を描き出した衝撃的なストーリーで、公開当時から大きな話題を呼んだ作品です。単なる悪役のオリジンストーリーを超え、現代社会が抱える問題を深く掘り下げた、見応えのある一作です。まだご覧になっていない場合は、ぜひ一度体験してみてください。